限会社「島田動物舎」 島田直明さん
「移動動物園 ズーキス」
(有)島田動物舎 島田直明さん

1962年東京都生まれ。高校時代、酪農と動物にかかわる仕事がしたいと考えて、酪農場や動物飼育士の訓練所などで研修を受ける。農業大学への進学を考えていたが、ちょうどその時、開園を迎えていた東武動物公園への就職を選んだ。独学で、動物の調教技術を学び、同園初の動物調教士として、動物パレードやオットセイのショーなどを実施。
18年の勤務を経て独立。移動動物園・ズーキスを始める。
事務所 埼玉県越谷市赤山町1−105
電話番号 048-966-9299
URL http://www.zookiss.com/
「動物たちとの素敵な空間と時間をプロデュースします」
創業への道
「移動動物園なんて、まがいものじゃないの?」

島田さん自身も、大手の動物園で飼育係をしていたときには、そんな印象だったそうです。

記者も、移動動物園という言葉から、旅回り一座の興行みたいなイメージを持っていたのですが、それはもののみごとに裏切られました。

取材の申込みの電話を入れさせていただいた時、その応対をしてくれた若いスタッフの受け答えがあまりにもきちんとしていたので、島田さんにお会いした時、開口一番、そのことを伝えました。

すると、島田さんはにこやかに、「私達の仕事は接客業ですから」と説明をしてくれたのです。

移動動物園というと、単に動物を連れていって子どもたちに勝手に遊ばせるようなものをイメージするかもしれません。

でも、子どもたちと動物たちが楽しくふれあうためには、その橋渡しをするプロのふれあいスタッフが必要なのです。

連れていく動物たちは、私たちが手塩にかけて育てた自慢の子たちです。
よく調教された安全な動物たちですが、彼らにしてみれば、やたらに人にいじられたくはないはずです。

一方、子どもたちは触りたくてしょうがない。
その動物たちと子どもたちのふれあいのバランスを上手にとるのが、プロのスタッフの手腕なのです。

「さわりたい」と「さわられたくない」のバランスをとるためには、スタッフが子ども達に「どのように動物たちに接すればいいのか」のヒントを上手に与えなければなりません。

「こうしなさい!」「そんなに乱暴にしたら、だめじゃないか!」といった命令口調では、子どもたちは楽しいはずがありません。

私達がまず提供しなければならないのは、「楽しんでもらうこと」なのです。
ですから、「こうすればいいよ!」と模範を見せることで、動物との接し方のヒントをあげるようにします。

例えば、どこにもリーダー格のやんちゃ坊主がいるものですが、まっさきにその子にヒントをあげて、やってみてもらうのです。
上手に動物を扱えた彼(彼女)は、鼻高々で「ほら、こうすればいいんだよ。」と他の子に教えてくれたりするのです。

子どもたちと動物たちのふれあいを橋渡しするスタッフを、私達は「エデュケーター」と称しています。

子どもたちに、動物たちとの正しいつきあい方を知ってもらうとともに、自分の手の中で感じる命の鼓動やぬくもり、そしてそれを愛しいと感じる心を育んでもらいたいと考えているからです。

ズーキスは動物を介在させたイベントとして、まず、お客様に楽しんでいただけるものでなければなりません。
そのためには、声を出す、きちんと立つといったことや、コミュニケーションの基本といった接客の技術を身につけていなければならないのです。




   
「島田動物舎指針」というものを作っています。


1. 我々は、お客様に本当に清潔で衛生的な環境の中で、よく馴れた動物たちとふれあい、本当の友達になっていただきたい。
そして、訓練された動物たちの能力をショ−として見せることにより、動物の素晴らしさ、美しさを感じていただきたい。

2. 我々は、動物に対する正しい知識と高い飼育技術を身に付けます。
そしてお客様に楽しんでいただく為に接客技術も身に付けます。

3. 我々が、動物たちとお客様の中間にいて、今までに蓄積した教育的な見地から動物に関する様々な知識や情報を伝えるエデュケーターとなる事により、お客様の動物及び自然環境の保護への入口となり、お客様を喜ばせ、満足していただける本当のあるべき理想のふれあい動物園を作り上げるのです。




私ども島田動物舎の仕事は、一口で言えば、お客様に満足していただくことです。
「業務の手引き−接客編」より抜粋

会社はお客様が満足するサービスを提供することにより、利益を上げます。

製造業でも接客業でも販売業でも、結果としてお客様がそのサービスに満足されなければ、その会社は繁栄しません。

お客様に満足いただくサービスを提供するというこの考え方は、動物を介在するビジネスにおいても変わりありません。

ただ、我々の扱う商品=イベントの構成要素が「生きている動物である」ということが特殊な点で、動物を電化製品や食品などの「モノ」と同様に扱ってはいけないということに、注意深くならなければなりません。

我々のイベントに参加する動物たちは、極力ダメージの少ない方法でお客様に提要しなくてはなりません。


つまり、実は、「ふれあい移動動物園」でお客様に満足していただくという仕事には、「動物達を不幸にしない範囲で」という注釈がつくことになります。

そのような考え方は、我々のイベントが命の大切さや自然保護に関心を持たせるといった教育にもつながるものだということにも合致しています。

我々が特に重視していることがいくつかあります。

1. 安全管理に努め、事故を起こさないことを絶対とする。
2. 美観を重視し、かつ、防疫、消毒、動物衛生を徹底する。
3. 質の高いサービスを提供し、特に接客面ではお客様の快適性を第一とする。
4. 高水準の技術に基づき、常に健全な動物を提供する。
5. 動物とのふれあいを通して、子どもたちの健全な精神の発達に寄与する。
 
以上の点で、みなさんの業務と無関係なものは、ひとつもありません。

ここに挙げられた理念を実践するため、さまざまな努力と工夫をしていますが、みなさんにお任せするのは、お客様と接しながら、これらのことを実践していただく重要な部分なのです。

それは一見、ブースの管理運営と付帯業務に過ぎないように見えるかもしれませんが、実はその全ては目的ではなく、真の目的のための手段に過ぎないのです。

真の目的、島田道物舎のスタッフとしての仕事の目的は、「お客様に満足していただくこと」なのです。

電話での応対がすばらしいのは、このようなスタッフ教育を徹底している成果だったのです。

そして、「業務の手引き−ブース内業務」の項目に、なるほどと唸らせる指示が掲載されています。
  

 
「お迎えから送り出しまで」
担当ブース内にお客様がお見えになった時、大切なのはご挨拶です。人が他人に対し、「感じの良い人だ」、「嫌な奴だ」など特定の印象を抱くのに必要な時間は、わずか0.3秒間というデータもあります。

すでに、例として挙げたように、お客様のイベントに対する印象は、みなさんの対応によって、その内容に関わらず大きく変わります。

その対応の端緒が、ブースにお客様が足を踏み入れたその時ですから、それは大切な一瞬なのです。あなたの一番の笑顔で「こんにちは」とすべてのお客様に声をかけて下さい。

このアプロ−チの成功は、ブース内でのクレームの発生を予防し、突発事態への対応も容易にします。

ブースには開閉部分がありますから、余裕のあるときは出入りお手伝いをしましょう。

ブースを退場されるお客様には、「ありがとうございました」と声に出して感謝の意を表して下さい。心で思っているだけなら、思っていないのと同じです。

最後に、「島田動物舎・ズーキス」の「日常の飼育管理」マニュアルから、「動物のチェック」をご紹介しておきたいと思います。

チェックポイント

1. 元気、食欲はあるか? 餌が下に落ちていないか?
2. 鳴き声、呼吸状態に変わりはないか? せき、くしゃみなどをしていないか?
3. 便の状態。ふんや尿の状態は正常か? ふんの堅さ、匂い、色、寄生虫は? 尿の色、血尿 血便?
4. 目やに、鼻水、耳だれなどはないか?
5. 外傷はないか?
6. 毛ツヤ、羽ツヤ、顔つきなどに異常はないか?
7. 正しく歩行しているか?
8. 痩せていないか?
9. 熱はないか?
10. 行動に異常はないか? ボーっとしていなか? 動かない 目を閉じている 羽を膨らませている