下部尿路疾患 (ストラバイト結石症、シュウ酸カルシウム結石症)
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(1)下部尿路疾患の症状

結晶と呼ばれる無機質の沈渣、いわゆる結石が膀胱で作られます。その原因は感染、犬種の特質などさまざまですが、その結石が膀胱から尿道を下降する途中で詰まって、尿道閉塞を起こすのが下部尿路疾患です。オス犬の尿路系はメス犬よりもその構造から尿道閉塞を起こしやすくなっています。結石が膀胱から尿道を下降する途中で、陰茎骨の背側で詰まってしまい、尿の流れを遮断してしまいます。

部分的に尿道が閉塞している場合には、排尿時に尿をポタポタ垂らしますが、これは完全に閉塞する予兆で、完全に詰まってしまうと、膀胱が膨満して、その痛みで、クンクン鳴いたり、落ち着きをなくして排尿しなくなり、急速にショック状態になります。この状態は命にかかわることがあります。


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(2)病気の解説と治療法

1.ストラバイト結石

ストラバイト結石は、リン酸アンモニウムマグネシウムの結石で、最もポピュラーな犬の尿路系結石です。この結石は、下部尿路系のスタフィロコッカス、あるいはプロテウス属の細菌感染によって作られます。細菌が尿をアルカリ性にすることで、結石ができやすい環境になるためです。メス犬の尿路系は構造的に感染しやすく、ストラバイト結石ができやすいとされています。

ストラバイト結石ができやすい犬種(メス)は、ビジョン・フリーゼ、コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザーです。

細菌感染に対しては、持続的な抗生剤治療を行います。また、処方食としては、尿を酸性にするとともに、カルシウム、リン、マグネシウムを制限したフードを与えます。処方食を与えることで、小さなストラバイト結石は溶解しますが、大きな結石は外科的に摘出しなければなりません。

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2.シュウ酸カルシウム結石


この結石は、ストラバイト結石に次いで多い、膀胱結石、尿道結石です。慢性の中程度の脱水がある犬に多いとされます。

シュウ酸カルシウム結石ができやすい犬種(オス)は、ビジョン・フリーゼ、ラサ・アプソ、ミニチュア・プードル、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、ヨークシャー・テリアです。

犬の食事をドライフードから水分含有の多いウェットフードに変える、水をたくさん飲ませるようにするという方法があります。

処方食は、尿を酸性にするタンパク質やカルシウム、ナトリウムを制限したものです。また、シュウ酸ナトリウムの形成を助長するビタミンD,ビタミンCを過剰に摂取させないようにします。そして、ビタミンB6,ビタミンK,ビタミンA、アミノ酸リシンが多く含まれる食事を与えます。

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Copyright Masterfoods

ウォルサム
(マスターフーズ)
「phコントロール」

1kg、3kg、8kg


代謝エネルギー
411kcal/100g



下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)の犬に

マグネシウムなどのミネラル成分を調整し、たんぱく質含有量を制限しています。5〜12週以上の給与を勧めています。細菌性の場合には、尿結石の消失後、少なくとも1ヶ月は継続給付して下さい。
適応
  • 犬の下部尿路疾患
  • 尿路結石症(ストルバイト及びシュウ酸カルシウム)
製品特長
  • ストルバイト結石の溶解を容易にする尿生成のサポート
  • ストルバイト結石が形成されにくく、細菌も繁殖しにくい弱酸性尿の生成をサポート。尿ph 5.5〜6.0
  • ストルバイト結石及びシュウ酸カルシウム結石の飽和度の減少を考慮し、尿量の増加をサポート
  • ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)の構成成分であるマグネシウム含有量を制限。(マグネシウム制限0.06%)
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栄養組成(平均分析値) 従来の製品とは算出方法が異なりますので、給与量の目安を必ず確認して下さい。
たん白質
脂肪
食物線維
灰分
水分
炭水化物
カルシウム
カリウム
リン
マグネシウム



亜鉛
クロール
ナトリウム
セレニウム
17.5g
16.5g
2.4g
6.8g
8.8g
45.3g
0.7g
0.78g
0.49g
0.06g
13.43mg
2.24mg
23.36mg
2.04g
0.97g
0.032g
EPA+DHA
L−カルチニン

タウリン
アルギニン
ビタミンA

ビタミンE
ビタミンC
ビタミンD3
ビタミンB1
ビタミンB2
パントテン酸
ビタミンB6
ビタミンB12
ニコチン酸
ビオチン
葉酸
コリン
0.214g

0.20g
0.97g
2141.1IU

58.4mg
19.46mg
145.99IU
1.17mg
0.68mg
3.41mg
1.17mg
0.013mg
4.38mg
0.12mg
0.13mg
291.97mg
原材料
米、コーンフラワー、家禽(鶏・七面鳥)肉、動物性油脂、コーングルテン、家禽レバー、ビートパルプ、卵パウダー、ビール酵母、サンフラワーオイル、魚油、フラクトオリゴ糖、DL−メチオニン、L−リジン、タウリン、L−トリプトファン、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、各種ビタミン・ミネラル
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ウォルサム
(マスターフーズ)
「phケア」

1.5kg、6.5kg

代謝エネルギー
370kcal/100g
犬下部尿路疾患のリスクを減らしたい犬に(治療目的の製品ではありません。)
  • 犬下部尿路疾患のリスクを低く抑える三要素に基づき成分を調整。
    *尿を弱酸性に保つ
    *ミネラルの摂取量を調整する
    *消化性を高め、尿量を増やす
  • 皮膚の健康と被毛の光沢のため、リノール酸及び亜鉛を強化。
  • 厳選された高消化性の原材料を使用。
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栄養組成(平均分析値) 従来の製品とは算出方法が異なりますので、給与量の目安を必ず確認して下さい。
たん白質
脂肪
食物線維
灰分
水分
炭水化物
カルシウム
カリウム
リン
マグネシウム


マンガン
亜鉛
クロール
ナトリウム
セレニウム
27.5g
17.6g
1.6g
6.7g
9.84g
44.9g
1.37g
0.6g
0.88g
75mg
21.5mg
2.64mg
2.1mg
46mg
1.51g
0.87g

− 
EPA+DHA
L−カルチニン

タウリン
アルギニン
ビタミンA

ビタミンE
ビタミンC
ビタミンD3
ビタミンB1
ビタミンB2
パントテン酸
ビタミンB6
ビタミンB12
ニコチン酸
ビオチン
葉酸
コリン
− 
− 
270mg
ー 
ー 

124IU
0.0mg
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
ー 
原材料
米、鶏肉、トウモロコシ、食物繊維(シュガービートパルプ、フラクトオリゴ糖)、植物性油脂(サンフラワーオイル)、動物性油脂(鶏脂)、タウリン(抗活性酸素物質として)、アルファルファ(フラボノイド源として)、マリーゴールド(ルテイン源として)、トマト(リコピン源として)、ビタミン、ミネラル類


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「食事療法食は必ず獣医師の指示に従って与えて下さい。」

Copyright Hill's

プリスクリプション・ダイエット
(ヒルズ)

「c/d」

1kg、4.5kg、9kg
栄養特性
  • マグネシウム、リン、ナトリウムを制限
  • 抗酸化成分の添加。フリーラジカルによるダメージを低減。
  • 尿ph(目標値) 酸性(6.2〜6.4)
適応
  • マグネシウムとリン(ストルバイトの成分)が制限され、尿phが酸性で、ストルバイト結晶尿及び尿石症の再発防止に役立ちます。
    犬のストルバイト結晶尿及び尿石症の管理においては、尿路感染症の管理が重要になります。一般的に尿路感染をおこす細菌は、尿素を分解し、尿中のアンモニアレベルと尿phを上昇させ、その結果、ストルバイトが形成されやすくなります。尿phの上昇は細菌感染症の再発の可能性を高くします。
  • 成犬の健康維持に必要な栄養素をバランス良く含んでいます。
栄養組成(平均分析値)保証分析値とは異なります。エッグ&ライス
代謝エネルギー

399kcal/100g
粗タンパク質
粗脂肪
粗繊維
粗灰分
水分
カルシウム
リン
ナトリウム
マグネシウム

19.0%以上
17.0%以上
4.0%以下
6.0%以下
10.0%以下
0.60%以上
0.30%以上
0.31%以下
0.140以下
原材料
トウモロコシ、動物性油脂、大豆、トリ肉、コーングルテンミール、全卵、植物性油脂、亜麻仁、タウリン、ミネラル類、ビタミン類(ビタミンE,ビタミンC,ベータカロチン、他)
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プリスクリプション・ダイエット
(ヒルズ)

「s/d」

1缶=415g
栄養特性
  • たんぱく質、リン、マグネシウムを制限
  • 抗酸化成分の添加。フリーラジカルによるダメージを低減。
  • 尿ph(目標値) 酸性(5.9〜6.1)
適応
  • 食事性のたんぱく質・マグネシウム・リンが低く、酸性の尿が産出され、犬のストルバイト尿石及び結晶の溶解に役立ちます。
  • マグネシウムとリンが低く、ストルバイトの成分であるこれらの尿中濃度を低下させます。
  • 尿量が増加し、希釈された尿になることにより、ストルバイト構成成分の尿中濃度が低下します。
  • 酸性の尿phはストルパイト結晶の溶解を助けます。
栄養組成(平均分析値)保証分析値とは異なります。
代謝エネルギー

133kcal/100g
粗タンパク質
粗脂肪
粗繊維
粗灰分
水分
カルシウム
リン

2.0%以上
6.0%以上
1.0%以下
1.8%以下
72.0%以下
0.04%以上
0.02%以上
原材料
コーンスターチ、全卵、動物性油脂、ポーク、ショ糖、セルロース、植物性油脂、タウリン、ミネラル類、ビタミン類(ビタミンE,ベータカロチン、他)
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Copyright Hill's

プリスクリプション・ダイエット
(ヒルズ)

「u/d」

1kg、4.5kg
栄養特性
  • たんぱく質、カルシウムを制限
  • リン、ナトリウムを低く
  • タウリン、L−カルニチン、可溶性繊維、抗酸化剤を添加
  • オメガ−3脂肪酸を増量
  • 食事性の緩衝能を増強
  • 尿ph(目標値) アルカリ性(7.1〜7.7)
適応 シュウ酸カルシウム、尿酸塩及びシスチンの尿石症
  • カルシウム、たんぱく質、一部のアミノ酸、核酸のレベルが制限されており、その結果、これらの尿石形成成分の尿中濃度が低下します。
  • 尿量が増加し、尿が希釈されるため、尿中の尿石形成成分の濃度がさらに低下します。
  • アルカリ性の尿phはストルバイト以外の結晶の溶解度を高めます。
  • タウリンとL−カルニチンが添加され、正常な心筋機能の維持に役立ちます。

栄養組成(平均分析値)保証分析値とは異なります。
代謝エネルギー

401kcal/100g
粗タンパク質
粗脂肪
粗繊維
粗灰分
水分
カルシウム
リン
8.0%以上
17.5%以上
3.0%以下
3.5%以下
10.0%以下
0.20%以上
0.10%以上
原材料
米、コーンスターチ、動物性油脂、全卵、セルロース、亜麻仁、大豆繊維、植物性油脂、タウリン、カルニチン、ベータカロチン、ミネラル類、ビタミン類(ビタミンE,他)
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参考資料 「犬の家庭医学大百科」 ブルース・フォーグル著 ペットライフ社 (2003年12月)