肝臓疾患
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(1)肝臓の疾患

肝臓は、タンパク質、脂質、糖質、そしてある種のビタミン、ミネラルの代謝を行う器官なので、肝臓に障害があると、これらの栄養素の代謝、貯蔵、代謝副産物の解毒といった機能が低下するため、栄養障害による体重の減少が見られるようになります。また、生体に有害な代謝副産物の分解や中和が十分に行われなくなると、肝性脳症などの神経系の合併症を引き起こしやすくなります。

肝臓は、新しい細胞を再生する能力があり、損傷や疾患で多少、細胞が破壊されても、肝機能の80%以上が失われるまで、肝不全の症状は現れません。

肝臓病には急性と慢性があり、その原因として「原発性疾患」と「二次性疾患」があります。
  1. 原発性疾患
    感染や毒物のような有害物質が肝臓に直接、影響を与えて起こる
  2. 二次性疾患
    身体のほかの部位の疾患から派生するもので、例としては犬の心臓が効率よく動かなくなることで、心臓に運ばれる血液が肝臓に溜まってしまい、それによって肝臓が腫大することなどがあります。
急性肝不全」

肝機能が急激に喪失されるもので、犬伝染性肝炎、犬好酸性細胞性肝炎ウィルスなどの感染症によって起こります。特定の地域では、感染症のレプトスピラ症が急性肝不全の原因になっています。また、抗痙攣薬や抗生物質、鎮静薬などのいろいろな薬剤によって起こることもあります。ショック、外傷、熱射病、急性循環不全、敗血症なども原因となります。

血液検査では、肝臓の酵素活性の上昇、血糖値の低下、コレステロール、胆汁の増加などが認められ、レントゲン検査では、肝臓の肥大が見られます。


「慢性肝臓病」

慢性肝臓病は初期の段階ではほとんど症状がないため、気がつかないで放置されるケースが多いのですが、炎症性細胞と線維組織の増殖を引き起こし、最後には肝硬変や肝不全になります。
急性肝不全の原因となるものは、慢性肝臓病の原因にもなります。

初期には、体重減少、食欲減退、多飲と多尿の症状が見られ、進行すると肝機能のほとんど全てが失われます。
  • 黄疸(身体の組織が黄変する)。
  • 尿は胆汁が混ざって、暗い紅茶色になる
  • 糞は灰白色で脂肪分を含んでいる
  • 内部出血による血便、血尿、また皮膚には挫傷が見られる
  • 腹水が溜まって腹部が腫れ、四肢は水腫で膨張します
  • 肝性脳脊髄障害による異常行動
    アンモニア誘導性の脳の炎症に伴い、見当識障害、協調性の欠如、痙攣、発作などが起こる
血液検査の他に、酵素、ビルビリン、胆汁酸などの測定、レントゲンやCTスキャンによる肝臓の画像検査などで慢性肝臓病を確定します。針やシリンジを用いて肝細胞のバイオプシーや細胞診を行うことで、より正確な診断が可能です。

中齢のどーベルマンには、免疫系が関係する慢性肝炎や肝硬変の危険性が高いとされます。また、アメリカン・コッカー・スパニエルは、若い雄犬で慢性肝炎にかかりやすいと言われ、症状も重くなります。

ベドリントン・テリアとスカイ・テリアは銅貯蔵病の遺伝的素因を持っており、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアは銅貯蔵病が関連した慢性肝炎とその後の肝硬変の危険性が指摘されています。

「銅貯蔵病」

肝臓は銅を貯蔵して、それを胆汁の中に排泄します。適切な排泄ができないと、銅貯蔵病や銅製肝障害を発症します。治療としては、銅を制限した食事や亜鉛補充食品を与えます。

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(2)治療法

肝臓の疾患には多くの原因があって、そのほとんどが肝臓以外の部位で起こっていることから、原発となっている疾患を見つけて、その原因を取り除くことが効果的な治療方法です。

ブドウ糖の補液を点滴して、腹水を除くための利尿剤を投与するとともに、身体活動を適切に保ち、良質のタンパク質を少量含んでいる特別食を与えるようにします。


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(3)食事療法 「食事療法食は必ず獣医師の指示に従って与えて下さい。」

肝不全の起こしている時の食事管理には次のような目的があります。
  1. 身体組織の維持と肝細胞の再生のためのタンパク質、エネルギー補給
  2. 肝細胞に負担をかける窒素性廃棄物などの低減
  3. 肝機能の維持に必要な栄養素の補給
必要量以上のタンパク質はアンモニアなどの窒素性廃棄物のもとになり、肝細胞に負担がかかります。また、消化しにくいタンパク質を摂取すると、未消化のタンパク質が腸内細菌によってアンモニアになって吸収されることになり、それが肝臓の負担になります。すなわち、高消化性のタンパク質をある程度制限しながら、給与する必要があります。エネルギー源としては、炭水化物や脂肪をメインにすることが勧められます。

また、窒素製廃棄物を代謝する回路に必要な「亜鉛」、腸内のアンモニアの生成/吸収を抑制するための「可溶性繊維」を給与します。

肝臓に蓄積する可能性のある、そして門脈高血圧を抑制するためにナトリウムの含有量を制限する必要があります。肝細胞を傷つける活性酸素を抑制するための「抗酸化物質(ビタミンEなど)」が強化されます。

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「食事療法食は必ず獣医師の指示に従って与えて下さい。」

Copyright Masterfoods

ウォルサム
(マスターフーズ)
「肝臓サポート」

1kg、3kg、8kg

代謝エネルギー
415kcal/100g


適応
・主に高アンモニア血症を伴う慢性肝炎・肝不全・銅蓄積性肝疾患・門脈シャント・黄疸・尿酸塩結石症のリスク低減・肝性脳症


小売調査価格
1,800円/1kg
肝疾患やそれにともなう高アンモニア血症を呈する犬に給与することを目的としています。消化性の高い良質なタンパク質を適切な量に調整しています。また、脂肪及び銅の含有量を制限し、必須脂肪酸、亜鉛及び消化性の高い炭水化物を増量しています。
  • 肝細胞内の銅蓄積や胆汁うっ滞による細胞内損傷を低減させるため亜鉛を増強し、銅含有量を制限。
  • 肝細胞をサポートするため、複数の抗活性酸素物質を増強。
  • 門脈性高血圧と細胞外液の貯留を考慮して、ナトリウム含有量を調整
  • 体タンパクの利用や肝性脳症のリスクを回避するために、エネルギー源として炭水化物を増量。

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栄養組成(平均分析値) 従来の製品とは算出方法が異なりますので、給与量の目安を必ず確認して下さい。
たん白質
脂肪
食物線維
灰分
水分
炭水化物
カルシウム
カリウム
リン
マグネシウム


亜鉛
クロール
ナトリウム
セレニウム
15.4g
15.4g
2.4g
4.5g
8.7g
49.9g
0.7g
0.77g
0.48g
0.09g
17.34mg
0.48mg
23.12mg
0.77g
0.16g
0.036g
EPA+DHA
L−カルチニン

タウリン
アルギニン
ビタミンA

ビタミンE
ビタミンC
ビタミンD3
ビタミンB1
ビタミンB2
パントテン酸
ビタミンB6
ビタミンB12
ニコチン酸
ビオチン
葉酸
コリン
0.183g
28.90mg

0.20g
1.02g
1252.4IU

57.8mg
19.27mg
43.35IU
1.16mg
0.67mg
3.37mg
1.16mg
0.013mg
4.34mg
0.12mg
0.13mg
289.02mg
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原材料
コーンフラワー、米、動物性油脂、加水分解大豆タンパク、家禽(鶏・七面鳥)レバー、ビートパルプ、フラクトオリゴ糖、サンフラワーオイル、魚油、DL-メチオニン、L−リジン、タウリン、L−カルチニン、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、各種ビタミン、ミネラル
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「食事療法食は必ず獣医師の指示に従って与えて下さい。」

Copyright Hill's

プリスクリプション・ダイエット
(ヒルズ)

「h/d」

1kg、4.5kg


小売調査価格
1,974円/1kg

  • ナトリウムは非常に低く
  • クロライドは非常に低く
  • タンパク質は低く
  • りんは低く
  • カリウムは通常レベルを維持
  • ビタミンBは高く
  • タウリンを添加
  • カルニチンは添加
  • カロリーは高く
  • 高血圧、体液貯留、ナトリウム貯留が顕著に認められる肝疾患
    ナトリウム、クロライド含有量を制限しており、肝疾患の患犬の高血圧、ナトリウム貯留、体液貯留による諸症状を改善します。
  • 心疾患、腎疾患
  • 犬糸状虫症
栄養組成(平均分析値)保証分析値とは異なります。
代謝エネルギー

393kcal/100g
タンパク質
脂肪
炭水化物(NFE)
繊維質
カルシウム
リン
ナトリウム
カリウム
マグネシウム
クロライド
タウリン
カルチニン
16.5%
18.2%
51.6%
1.7%
0.74%
0.50%
0.06%
0.71%
0.140%
0.31%
0.12%
277mg/kg
原材料
トウモロコシ、米、動物性油脂、トリ肉、カゼイン、全卵、植物性油脂、セルロース、ミネラル類、ビタミン類(ビタミンE,ビタミンC,他)、カルチニン、タウリン、ベータカロチン

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Copyright Hill's

プリスクリプション・ダイエット
(ヒルズ)

「l/d」

1kg、4.5kg

小売調査価格
2,026円/1kg
  • 高品質なタンパク質
  • 分岐鎖アミノ酸を高く
  • 芳香族アミノ酸は低く
  • アルギニンは高く
  • メチオニンは低く
  • 銅・鉄は低く
  • L-カルチニンを添加
  • 炭水化物は高消費性
  • カリウムは高く
  • ナトリウムは低く
  • 亜鉛は高く
  • ビタミンC,E,K,は高く
  • 肝疾患
    高品質のタンパク質は肝臓の作業負荷を軽減し、肝臓の組織の再生を助けます。特に肝機能を管理するため、主要なビタミン類、ミネラル類を適切に増量しています。
    肝細胞性疾患、門脈体循環シャント、肝性脳症、犬伝染性肝炎、銅貯蔵病、線維性肝障害、胆管系疾患、糖質コルチコイド誘発性肝障害などの肝疾患を持つ犬の食事管理のために調整sれています。
    ナトリウムを中程度に制限することにより、肝疾患をもつ犬のナトリウム摂取量を少なくし、体液貯留に関係する臨床症状のコントロールに役立ちます。
  • 肝性脳症
    神経症状を引き起こす可能性のあるアンモニアや他の窒素化合物を減少させるため分岐鎖アミノ酸や芳香族アミノ酸を適切な量に調整しています。
  • 銅貯蔵病
    食事中の銅を制限し、亜鉛を増量することにより、腸管からの銅の吸収を制限します。このことは、銅貯蔵病の素因を持つ犬の肝臓への銅の蓄積を避けるために役立ちます。
栄養組成(平均分析値)保証分析値とは異なります。
代謝エネルギー

444kcal/100g
タンパク質
脂肪
炭水化物(NFE)
繊維質
カルシウム
リン
ナトリウム
カリウム
マグネシウム
クロライド
カルチニン

アルギニン
16.5%
22.3%
46.8%
2.1%
0.73%
0.57%
0.19%
0.84%
0.080%
0.72%
279ppm
4.5mg/kg
1.15
原材料
米、動物性油脂、全卵、大豆、パスタ、大豆繊維、亜麻仁、肉タンパク抽出物、ミネラル類、植物性油脂、セルロース、ビタミン類、アルギニン、タウリン、カルチニン

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参考資料 「犬の家庭医学大百科」 ブルース・フォーグル著 ペットライフ社 (2003年12月)
       「動物看護エキスパートBOOK」 小嶋佳彦・相田真由美著 インターズー (2004年7月)